遺言はどの方法で作成するのがよいか~遺言の種類とメリット、デメリットを解説で、遺言書を作成する場合には可能な限り公正証書遺言にするべきとの解説をしましたが、実際に公正証書遺言を作成するには、どのように進めればよいでしょうか。本記事では、公正証書遺言を作成するまでの流れや必要書類、費用等について解説します。
公正証書遺言作成までの流れ
公証役場に相談する
公正証書遺言は、公証役場の公証人に依頼して作成してもらいます。まずは公証役場に電話し、予約した上で相談に行きましょう。電話口にて遺言書を作成したい旨の意向を伝えれば、日程調整等の案内をしてくれます。
管轄は特にないため、どの公証役場でもよいですが、何度か足を運ぶことになりますので、アクセスの良い所を選ぶと良いでしょう。
遺言の内容について公証人と打合せをする
担当の公証人が決まると、初回の打合せまでに、どのような遺言にしたいのか、希望を整理したメモの作成や必要書類の取り寄せ等を案内されることがありますので、それに従い準備をします。遺言の内容については、どのような財産があるのか、それを誰に相続させたいかをメインに検討しますが、その他にも要望があれば、遺言に盛り込めるか、公証人と相談すると良いでしょう。
打合せは数回に及ぶこともあり、追加の資料の提供を求められることもありますが、公証人と相談の上、状況に応じて電話やメール等での対応も併用すると効率的です。
公正証書遺言の内容を確定する
遺言の内容が固まってくると、公証人が遺言の文案を作成します。これを確認し、修正の有無についてやりとりをした上、内容を確定させます。
公正証書遺言作成日程の調整
遺言の文案が確定したら、実際に公正証書を作成する日程を調整します。遺言をする本人の他、証人2名の立会いも必要になりますので、合わせて日程調整します。通常は公証役場に出向きますが、本人が病院等から異動するのが難しい場合には、有料にて出張をお願いすることもできます。
遺言作成当日
当日の手続には、証人2名が立ち合います。
本人が公証人に遺言の内容を口頭で伝え、これを公証人が書き取る「口授」という手続が必要となりますが、実務上は、予め公証人が作成した遺言書案を本人に読み聞かせ、本人がこれと同趣旨の発言をすることで「口授」があったという扱いとされています。ただし、実際の手続は、本人の受け答えがどの程度できるか等の状況によってケースバイケースになります。遺言能力の確認もこの段階で行われます。
遺言の内容に間違いがないことが確認されると、本人と証人2名が遺言書に署名・押印します。さらに、公証人も署名・押印し、公正証書遺言が完成します。
公正証書遺言作成の必要書類
通常は次のとおりですが、他に必要な資料等がないか、打合せの前に確認することをお勧めします。
- 遺言者本人の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本等
- 相続財産に不動産がある婆には、その登記事項証明書
- 相続財産に預貯金がある場合には、その通帳のコピー
- 証人になる予定の方の氏名、住所、生年月日及び職業を記載したメモ
なお、上記の印鑑証明書は、運転免許証、マイナンバーカード等の顔写真入りの身分証明書でも代用できます。
公正証書遺言作成の費用
公正証書作成手数料の基準
相続財産の価額に応じて、次のように定められています。
相続財産の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に、1億円を超える額5000万円までごとに13,000円加算 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に、3億円を超える額5000万円までごとに11,000円加算 |
10億円を超える場合 | 249,000円に、10億円を超える額5000万円ごとに8,000円を加算 |
1億円を超える場合が分かりにくいかもしれませんが、例えば、相続財産の価額が1億6000万円の場合には、1億円を超える額が6000万円であるため、43,000円に、13,000円が2回加算されることになり、69,000円となります。
その他の費用
相続財産の価額が1億円以下の場合には、上記の手数料に1万1000円が加算されます。
また、遺言公正証書の正本及び謄本の交付手数料として、1枚につき250円かかります。
公正証書遺言作成に立ち会う証人の資格
上記のとおり、公正証書遺言を作成する当日には証人2名の立会いが必要ですが、次に該当する人は証人になることができません。
- 未成年者
- 推定相続人
- 遺贈を受ける者
- 2.3.の配偶者及び直系血族
これ以外の人で2名の証人を手配する必要がありますが、難しい場合には公証役場から紹介を受けることもできます。
まとめ
以上のとおり公正証書遺言の作成の流れや必要書類についてまとめましたが、公証役場に相談すれば、一通りの手続きは案内してもらえるでしょう。また、遺言の作成に当たっても、内容等は公証人と相談して作成することになりますので、特に弁護士等の専門家に依頼する必要はないと思われます。そこで、公正証書遺言を作成する方は、まずはお近くの公証役場に電話をすることをお勧めします。