基礎知識

自筆証書遺言の作成に当たり気をつけるべき3つのポイント

遺言はどの方法で作成するのがよいか~遺言の種類とメリット、デメリットを解説で、自筆証書遺言と公正証書遺言の概要と、それぞれのメリット・デメリットについて解説しましたが、弁護士の立場からは、可能な限り公正証書遺言を作成するのがお勧めです。しかしながら、諸々の事情により公正証書遺言を作成できず、自筆証書遺言を作成する方針をとる方は、遺言が無効にならないことはもちろん、遺言の有効性を巡って紛争が生じないよう気をつける必要があります。

本記事では、このような注意点への対応として3つのポイントを解説しています。

自筆証書遺言のリスクと注意点

遺言はどの方法で作成するのがよいか~遺言の種類とメリット、デメリットを解説でも解説したとおり、自筆証書遺言には、無効となってしまうリスクと、有効であっても、遺言の内容を巡って相続人同士で争いになってしまうリスクがあります。これらのリスクを抑え、遺言内容の実現の確実性を高めるために気をつけたいポイントは、次の3つです。

  1. 方式違反にならないようにする
  2. 遺言能力があることを明らかにしておく
  3. 遺言の内容を明確にする

以下、これらについて詳しく解説します。

ポイント1~方式違反にならないようにする

自筆証書遺言の方式として、次の事項を遵守する必要がります(民法968条)。これに違反してしまうと遺言全体が無効となってしまうため、注意が必要です。

全文を自書すること

遺言書の全部を、遺言者が自分で手書きする必要があります。ワープロやパソコンで作成することはできません。ただし、遺言書と一体となる相続財産目録を添付する場合には、目録の各ページに署名・押印をすれば、目録部分については手書きでなくてもよいとされています(民法968条2項)。

この点、遺言者が高齢や病気等の原因で手が不自由な場合であっても、他人が手助けをすると、原則としてこの自書の要件を充たさないものとして無効となってしまいます。添え手による補助であっても、単に支える程度を超えてしまうと無効とされる場合がありますので、注意が必要です。

日付及び氏名を自署し、押印すること

遺言書を作成した日付と、氏名を自署した上、押印します。日付は、「令和6年3月吉日」のような記載は無効とされるのが判例の立場です。必ず何日かまで明確に記載しましょう。押印は、実印である必要はなく、認め印や指印でもよいとされています。

ポイント2~遺言能力があることを明らかにしておく

遺言書を有効に作成するには、遺言の内容を理解する能力である遺言能力が必要です。遺言能力を有しない者が作成した遺言書は無効となってしまいます。

遺言能力があることが疑わしい場合、遺言の内容に不満をもつ相続人から、遺言が無効であるとの裁判(遺言無効確認の訴え)を起こされる可能性があります。遺言が無効になってしまうと、遺言がなかったものとして、相続人同士で遺産分割をしなければならなくなってしまいます。

そこで、遺言書を作成する方の健康状態が思わしくない場合等には、遺言能力があること明確にすべく、証拠化しておくことが望ましいといえます。具体的には、遺言書を作成している場面を動画に保存しておくことが考えられます。その際、遺言の内容を理解していることがうかがえるようなやり取りが録画されていると、有力な証拠になるでしょう。

ポイント3~遺言の内容を明確にする

どの遺産を誰に相続させるといった遺言の内容を明確に記載します。

これが不明確だと紛争の元になってしまい、意図したとおりに財産を相続させられなくなってしまいます。特に、不動産については登記事項どおりに正確な情報を記載して物件を特定するようにしましょう。具体的には、所在、地番、家屋番号等を、登記事項証明書の記載どおり明記した目録を付け、それを引用するかたちで、取得させたい人に相続ないし遺贈する旨記載します。

このように対象となる不動産が明確に特定されていないと、誰がどの不動産を取得するかを巡って争いが生じるだけでなく、登記名義の変更にも支障をきたすことになってしまいます。

まとめ

自筆証書遺言を作成する際に気をつけたいポイントは以上のとおりですが、専門家としてはやはり公正証書遺言の作成をお勧めしたいところです。公正証書遺言の作成の流れ等については、公正証書遺言の作成の流れ~必要書類や費用も解説にて解説しますので、そちらもご参照下さい。

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